もちもちした犬

おもに日記のようなものを書きます。

台北

この前、何年振りかに台北に行った(まあ実は昨日もちょっと買い物にいったのだが)。

台北の人口密度は世界的に高いことが知られているが、そんななかにあって総統府や自由広場のあたりの道のだだっぴろさよ。権力そのものである。

新竹市から台北はバスで110元だった。1時間半ほどかかる。車窓からは、建物の上にでかい仏像?があるビルが見えたり、山にぽつんと立つ墓が見えたりするので意外と面白い。

台北轉運站(バスターミナル)の雰囲気は、バスタ新宿なんかよりは博多駅の横のバスターミナルを思い起こさせた。さて、特に目的もなく来たのでどうするか。

まず台北地下街を散策した。オタクと「新住民」のための店があるエリアという感がある。インドネシア料理の店や雑貨が並ぶ一方で、別の方向には日本風のメイドカフェなどもある。オタクゾーンは漫画やおもちゃ、ゲーセンなどがあり、日本のものも多く揃っている(ただし値段は倍くらいする)。中国語版のジョジョを一冊買った。

『死刑執行中逃獄進行中』(原題:『死刑執行中脱獄進行中』)

ごはんは食べ損ねたが、気まぐれでそのまま国家図書館にいくことにした。国家図書館はでかい図書館で、台湾中の博論や修論も収められている。いずれ研究関係で必要なものを読みに行く必要があるので、利用登録をしに行こうと思う。

国家図書館に行くために、台大医院前で下車。駅のそばに「二二八紀念館」があるではないか。二二八事件は、1947年の2月28日に、闇たばこを売る女性を警官が拳銃で殴打したことに端を発する一連の事件で、台湾の白色テロ時代のはじまりにあたる。この紀念館は、もとは放送局として使われており、二二八事件発生時にはここを占拠した人々が全国に事件の発生を伝え、決起を促したという。2011年にここを紀念館とすることが決まったそうだ。

入館料はどこで払うんですか、と施設の人に尋ねたら、この日は入館が無料だということを教えてもらった。中国語が下手だからか、すぐ日本人だとばれた。日本語のパンフもあり、展示物にもところどころ日本語の説明がついていた。

外観

日本統治時代を含む、詳細な背景と経緯が展示されており大変充実していた。白色テロの犠牲となった人々の遺品や功績も記されていた。その中には三高や京大で学んだ人もいた。一気に身近な人間のような気がしてしまう。彼らは吉田でどのような学生時代を過ごしたのだろうか。

各地で軍に抵抗し武装した人々。まだ20そこらの年齢で突撃隊長などとして死んでいった若者。基隆の港での虐殺などなど。台湾の近代史は、とにかく暗澹たる気持ちになる。それに、日本の右の人々は、このあたりのことを日本の植民地支配肯定言説に組み込んでしまうのである。

鄭南榕

2階の展示の最後に、鄭南榕の首像があった。彼は民主化運動(党外運動)の代表的な活動家の一人であり、戒厳令下で二二八被害者救済を訴えた人物でもある。焼身自殺という衝撃的な最期を迎えたが、その後の民主化への貢献はきわめて大きいだろう。


www.youtube.com

鄭南榕の映像に、台湾独立を掲げる政党「時代力量」の人がやってるバンドの曲が合わせてある動画。「時代」は鄭南榕の出版した雑誌タイトルに共通する語でもある。

 

さて、そこからちょっと歩くと国家図書館があるのだが、そのむかいには「自由広場」がある。蒋介石が祀られているでっかい広場である。台北のランドマーク的な場所だ。

!?

ジョーマローンvs蒋介石

ちわ~

遠目に観たことはあったが、やはりバカでかい。「人類的救星」だからしかたないか。1階から建物に入る。

いるじゃん

まず蒋介石の人形と彼の執務室の複製が目を引く。彼の功績や外国の元首との交流の記録、服や車など使用したものなどが展示されていた。

一方、その向かいには台湾での民主化運動に関する展示も。

彭明敏、鄭南榕、陳水扁などなど、民主化運動の歴史と運動にかかわった個々人の紹介がつまびらかになされる。

こうした展示が常設されているのも、今が民進党政権だからというのもあるかもしれないが、バランスのとり方として興味深い。結局名称は「中正紀念堂」に戻ってはいるが、その実、権威主義体制の総括という役割が大きい施設になっている。

 

さて、図書館の登録をしたものの、勝手がわからずすぐに退館する。ふらっと萬華の龍山寺まで移動。周辺の夜市を散策した。

龍山寺

むかし来た時もこのへんでごはんを食べたりしたっけな、と思っていたら西成のような路上蚤の市が出現。はじめてみたぞ。

なんでもあり

ラインナップはひどいもので、中古の服や靴、よくわからない石、さらにはコピー品のAV、偽バイアグラなども。香港の深水埗で見たどろぼう市を思い出したが、扱っているもののガラクタ度合いでは西成に近い。なにかいいものでもあれば買おうと思ったが、特にめぼしいものもない。

ただ日本の競走馬ぬいぐるみを売っていたおじさんがいたのはおもしろかった。ビワハヤヒデトウカイテイオーなど、90年代前半の馬のぬいぐるみをいくつも並べていた。最近ウマ娘のおかげかそのへんのぬいぐるみもたくさん売られるようになったが、このおっさんのものは当時モノだろう。めちゃくちゃボロくてばっちいのだ。それに馬の写真かブロマイドのようなものまで売っていた。中央競馬のおたくなんだろうと思う。

そのあとは適当にバスに乗って帰った。

台北は思ったよりは近いが、それほど近くもない。日本語の多いこの街は、ちょっと安心感を覚えてしまうが、これは植民者的でもある。