崎頂~新竹城隍廟
やはり授業を取るのは嫌なものである。博士課程なので別に取る義務は一切ないのだが、語学の問題もあるのでとりあえずは華語の講義を受講することにした。
授業の何が嫌かというと、周りのわいわいした空気かもしれないし、当てられて間違えたくないというアレかもしれない。もともとこういうのが嫌で変にフィールド志向になったような気がするが、そうであれば人間を相手にする必要がある人類学を選んだのは大きな誤算である。
昨日今日は、とりあえず土地勘を得るために周辺を歩き回った。1日に10キロくらい歩いたので結構キツい。まあ、ようやく台湾に来た実感がわくというものだ。
今日は午前中に市内中心部にでてきた。用事を済ませたので、まったく知らない駅までの切符を買い、電車に乗った。
台湾ドルが高くなり食料品、日用品の値段が普通に日本と同じ水準に近くなっているが、電車代やバス代はまだ断然安いと感じる。今回は新竹から南に行った「崎頂」という駅まで行った。
昼前の各駅には老人しか乗っていなかった。車窓からの景色も特に変わったものがあるでもないが、匿名的な台湾らしさを感じさせる風景が続いた。
20分ほどで崎頂に着いた。ここを選んだのは、とりあえず海が見えそうだったからだ。
何があるかろくに調べていなかったが、駅の近くには「子母隧道」と呼ばれる日本植民地時代のトンネルがあった。子母というのは、2つのトンネルがあるので親子というわけだ。昔はこっちを鉄道が走っていたらしいが、今はそれより海側に移っている。
まあこのような古臭いトンネルは日本国内でも怪談スポットになりがちだが、ググったらやはり心霊スポット的なネタになっていた。とりあえず通ってみる。
どっちが母でどっちが子かはよくわからないが、思ったより長く、中央まで来ると昼間でも足元が見えないほどの暗さだ。これを抜けるとタイムスリップしたり変な世界に入って二度と戻れなくなったり……と妄想が膨らむが、トンネルを抜けると、声のデカいおばさん軍団がワイワイと写真撮影をしており、すべてがかき消された。
トンネル2つを抜けたらこういう入口があり、駐車場もあった。自分のように駅側から来る人はあまりいないのかもしれない。引き返しつつ山側に上ると、展望台(というか要はあずまや)があり、海辺の巨大風車の群れと鉄道を見ることができた。
さらに海辺のほうにいくとフォトスポット?というか名勝地?があるらしかったが、農家の庭先に迷い込んでしまったので引き返した。太陽からの逃げ場がないアホみたいなアスファルト道を歩き、汗まみれさん太郎になった。
周辺にはごはんを食べる店もほぼないので(1つあったが店の人は休憩していた)、もとの新竹に帰った。駅前からずっと歩いていくと城隍廟がある。大きな廟だが、その敷地内に市場のような空間がセットになっており、大変活気がある。
肉燥飯を食べた pic.twitter.com/IwKPdhd60Z
— 西園 (@nishisonoda) 2022年9月16日
この中にある、「柳家」の肉燥飯(a.k.a.滷肉飯)。当然おいしい。パクチーいれるか聞かれたのでとりあえず入れてもらったが、悪くはない。
この周辺の街並みも、とても味わいがあったので散歩しがいがある。
騎楼がいいかんじだった pic.twitter.com/V07vpWn8my
— 西園 (@nishisonoda) 2022年9月16日
ひさしのようになった空間が続く騎楼。レンガがいい味わいを醸す。
こういう角にある家のカーブも美しい。見ていてうれしくなる。だが、ぼやっとしていると原付に轢かれるので写真もおちおち撮ってられない。
そのあとは大学に戻り、いろいろ作業をしたり資料探しをしたりしていた。
隔離期間含めて、台湾にきてまだ10日くらいだがもう日本が恋しくなっている。晩飯にはセブンで売っているハウスのジャワカレーを食べた。
とても弱い人間なので早くも故郷の味が恋しくなってしまった pic.twitter.com/rS0lRp6OkJ
— 西園 (@nishisonoda) 2022年9月16日
パックを開けた瞬間に、家で作るカレーのにおいが鼻腔を刺激する。失われたプルーストマドレーヌ的に、謎の郷愁が一気にこみ上げた(ちなみに自分は昔「スワン家のほうへ」で挫折したまま読んでいない)。冗談抜きに泣きそうになった。焦りもある一方、早く帰りたい気持ちもすでに大きくなりはじめているのだった。コンビニのカレーに感動する日もある。