もちもちした犬

おもに日記のようなものを書きます。

山奥で雲南料理を食べて踊る

雲南の踊りの団体の理事長から、明日土地公に参りに行くので朝から来なね?と言われた。あいにく、その日の朝には同じ会の別の偉い人にインタビューの約束をしていたのだが、その先生にその話をすると、時間前倒しでインタビューをおこなってそのあと土地公まで送ってもらえることになった。それはいいとして、8時半に桃園のはずれにあるこの集落までくるためには、6時前には寮をでなくてはならない。なのにその日の踊りの練習は9時半くらいに終わったので、電車で大学まで戻ると日付の変わるころに到着する。結構厳しい。ということで台北に一泊してくることにした(近所には全くと言っていいほど空きのホテルがなかった)。

 

あくる朝、案の定全然眠れないまま当集落に到着した。

いつもだいたい昼過ぎから夜に来るので、朝の市場の賑わいは新鮮だ。まあ、日曜日だからというのもあるだろうが観光客や地元の人で朝から活気がある。

肉、野菜、鮮魚、きのこ、料理、などなど。見たことないものもたくさんある。東南アジア華人を中心とした個性的な市場になっている。

 

それから2時間ほど、へたくそな中国語でインタビューともつかない聞き取りをおこなったのだが、朝ごはんをごちそうしてもらうことになった。雲南料理の米干(米で作ったきしめんのようなもの)である。見た目以上に旨味の強い、はっきりとした味がする。以前も別の店で食べたことがあったが、この日の一杯は疲れた体に沁みるようなうまさだった。

ミャンマーやタイ、この地域の過去の話や歌についての話を聞いた後で、土地公に連れて行ってもらうことになった。土地公とは台湾でかなりメジャーな種類の神様であり、廟はめちゃくちゃ多いため、私は勝手にすぐ近所にあるものと思っていたのだが、目的地はなんと車で数十分くらいのめちゃくちゃ山の中にあった。藪に埋まりそうな細道をかっ飛ばす車の中で、千と千尋の「この車は四駆だぞ」のシーンを思い出していた。

 

到着すると、廟の前で踊りがはじまっていた。

インタビューに応じてくれた先生は午後から仕事があるということで、しばらく滞在してから戻ってしまった。感謝しきりである。後ろでは料理やテーブルを用意している様子で、踊りが終わると全員で準備する流れとなった。

 

この雲南打歌の協会は100人以上の会員がいるので、知らない人も多い。自分は例によってまごまごしていたのだが、みんなフレンドリーに話しかけてくれたため助かった。

木瓜絲(パパイヤの細く切ったやつ)、豌豆粉(エンドウ豆で作ったぷるぷるしたやつ)、打拋豬肉(ガパオ)、臘肉(干し肉)、スペアリブの煮込んだやつ、鶏肉、タイ米などなど。雲南料理は「口味很重」であるのが特徴である、と横に座ったおじさんが言っていた。酸味、辛み、塩気、いずれもしっかりしていて、脂っこいものも多い。なるほど米干もそうかもしれない。地理的にも近いことからタイ料理と近いものも多い。

 

ご飯を食べてまた踊りが始まる。自分もまたこの輪に加わって踊ったわけだが、ほどよい酩酊状態で円を描くように回るこの踊りに加わることは、妙に心地が良かった。

 

何もないような山の中にたたずむ廟の前で、異国情緒ある料理を腹いっぱい食べ、夢見心地の酩酊状態で踊ることは、今後の人生においてもそうそうないだろう。

 

そうこうしているうちにお開きとなる。帰りは理事長か誰かに乗せてもらうように言われていたのだが、理事長の親戚の新竹に住んでいるという人が連れて帰ってくれることになった。しかし、「別の店で飲むぞ!」と言われ、飲酒運転の車でさらに30分ほどのタイ料理の店にいくことに。彼は以前タイのメーサロンなどに住んでいたこともあるといい、タイ人の知り合いも多いという。

氷をいれたソーダ水にウイスキーを入れて飲むのがタイでは一般的だ、と彼は言いながらガンガン飲む。乾杯をすると空けるきまりなので自分も速いペースで飲むことになる。長年の友達だというタイ人の店主が料理をどんどん出しながら一緒に飲む。ほかにもタイ人が集まってきた。みんな基本的に中国語を話していたが、タイ語のカラオケが開始され、一気にタイになった。

 

結構辛みも強いエビ。あとは揚げた鶏皮、でかい鶏肉なども出てきた。どれもめちゃくちゃ美味しいのだがすでに腹いっぱいだったのでちょっとずつしか食べていない。タイ料理として出てきたものが、さきほど食べていた雲南料理と近いことを改めて感じた(むろんタイ料理のなかにもいろいろあるのだろうが)。

ガンガン酒を飲んでいたら、理事長の親戚は私にタクシーを用意して帰してくれたのだが、彼はまた飲酒運転で帰ったのだろうか。

 

タクシーで大学まで戻ると、現実に引き戻された。さっきまでの一日がまるで夢だったのではないかという気持ちになると同時に、吐き気、頭痛、疲労が一気に押し寄せてきた。