もちもちした犬

おもに日記のようなものを書きます。

隔離めし(3日目)

引き続きめしの記録をする。

  • 3日目朝

キンパ?かとおもった

和風。海苔巻きの中身は鶏肉。こうみえて結構量がある。味噌湯(味噌汁)は備品のインスタントのものに比べたら当然おいしかった。具に鮭の身が入っていたのはちょっと合わない気がしたが。茶碗蒸は日本のものと同じ味がする。ちゃんとあたためてあったのでよかった。

 

  • 3日目昼

ファンシーな容器にみっちみちに詰められた水餃

水餃子、つみれの汁物、キュウリのあえもの。昼も結構量があった。

水餃子は期待通りの味。こういうのでいいんだよ。2色あり、中身が少し違う。辣椒醬はまあまあの辛さで、辛味噌っぽい味。

前に観た韓国映画の『オールドボーイ』では、謎の部屋に監禁された主人公が「マンドゥ」(韓国の餃子)を毎日食べさせられる。それを思い出して体を鍛えたりしたくなった。まあそもそもホテル隔離は『オールドボーイ』的だというのは前から思っていたが。

つみれは結構硬く、地元の長崎でよく食べられているタイプのすり身を思い出す。きゅうりの料理はたぶん涼拌小黃瓜だと思う。塩気が強い。

 

  • パイナップルケーキ

かわいらしいパッケージ。お土産にいいね

お昼過ぎに、何も頼んでいないのにピンポンが押されてびっくりしたのだが、かわいらしいお菓子が届けられていた。

台湾では明日10日が中秋節で、今日はその振替休日になっているから、こういうのをくれたのかもしれない(まあそれなら月餅でもいいのだが、個人的にはパイナップルケーキのほうが好きなのでよし)。

クランベリー味のパイナップルケーキ。その名前通り、一口目はベリー味、後味はパイナップルというかんじで安心して食べられる味。紅茶に合いそう。部屋にはコーヒーしかなかったのでしかたなくコーヒーを飲む。

箱も含めてキュートで結構気に入った。ゲスなので値段を検索したが結構いいもののようだった。外送とかビールとか買ったのもこれで相殺したことにする。

 

窓の外は晴れているしまだ夏である

今日は調査地の候補みたいなのをいろいろgoogle mapとかニュースとか論文とかから物色したが、大したことはしていない。

窓の外の景色は、自分と関係なく日常を刻んでいる。平日に電車で遠出して、知らない町の日常をのぞき見ているときと同じような気持ち。窓を開けると、まだ夏があった。日差しが暖かく、風は熱を帯びている。涼しい室内にずっといたので、外の気候とも完全に隔離されている。

  • 3日目夜

沖縄で食べたソーキみたいな味の豚肉

心なしかここ数日で一番豪華な気がする。豚のスペアリブ(ソーキと同じ部位)の焼いたん、豆系の炒め物、エビ、豆腐、などなど。

スペアリブは骨もあるので実質量よりは大きく見えるが、迫力があるし食べごたえはある。味は沖縄で食べたソーキと似ていておいしい。福建の味なのだろうか。

台湾では中秋には月餅はもちろん、焼肉やバーベキューも食べられるらしい。もしかしたらその関係ででかい肉を入れたのかもしれない。

ドラゴンフルーツ。少し青臭いがおいしく食べられる範囲だった。牛乳も頼んだのだが、これはなんというか、牛乳が嫌いな人の言う「牛乳臭さ」が強く感じられた。飼料の違いとか季節の問題なんだろう。

 

今日で隔離3日終わりなので、明日からは必要不可欠な買い物などでは外出ができるらしいが、その辺の具体的な裁量はよくわからない。外に出たくて仕方ないが、変なことをして罰金でも取られたら困る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隔離めしの記録

自分の場合、台湾に入ってから7日隔離されることになっている。ひとりで入れる部屋がある人間だと4日分は自室隔離でいいのだが、自分は寮なのでこのホテルにとどまる必要があるのだ。また、到着日は0日目となる。

1日中寝ていたい気持ちもあったが、朝飯が届けられたり体温の報告を何度かしないといけなかったりで、規則正しい生活をしなくてはならなくなる。それに、アマプラが見れなかったりウマ娘ができなかったりで退屈だ。テレビも面白くない。むろん、やるべきことはたくさんあるのだが……。

肝心なのはめしである。以下、昨日の朝めしから順に記録する。なお、一応のこと全部完食している。

  • 1日目朝

ハンバーガーは何の肉かよくわからなかった

弘爺漢堡と書かれていたのでそこのハンバーガーなのだろう。味はまあまあ。全体的に色素が薄めであったが、みかけよりも食いでがある。ヨーグルトはヨーグルト。パンは2つともクリームパンで、まあ後で食べた。味は普通。

  • 1日目昼

このカットにんじんは機内食でも見た気がする

大学の生協でいうところの古代米みたいな赤みのある飯の上に、フライドチキンが乗っている。そこにミックスベジタブルみたいなのがちらしてある。入っている菜っ葉はA菜?かなにかのよく炒めたやつなどだと思う。

健康志向と手抜き感の同居した一皿。なんだか物足りないので無料で頼めるチリソースを頼んだが、それでいい感じになった。

  • 1日目夜

中央上のてんぷらはイカかタコ?が入っていておいしかった

和食風の見た目だが、全部台湾風の味。ポストコロニアルな感傷が押し寄せる。右上のものなどは見た目では想像のつかないような味がした。全体的に味が強い。たくあんは嫌いだがしかたないので食べた。

 

以上のように、飯は全体的に微妙な水準で、しかもなんだかだんだんグレードダウンしているような気さえする。なんだかんだ日本円にして1泊2万程度の金を払ったので複雑な気持ちになるのも許してほしい。そこで、デリバリーをつかってみることにした。ホテルにチェックインするとき、部屋までのデリバリーは決められた時間内であれば使ってよいという説明を受けていたのだった。

普段は割高感があってあまり使わないのだが、この際である。腹が減っているというほどでもないので、とりあえずは注文の勝手を知るためにドリンクを注文してみた。

木瓜牛奶

木瓜牛奶は、パパイヤミルクである。はじめて台湾に行ったときに飲んでからとても気に入ったものだ。

配達サービスは、日本からは撤退したフードパンダを使った。配達はホテルのフロントにされるが、そこから部屋に持ってくるまでがかなり時間がかかった。とはいえ、ちゃんとまだ冷たくておいしかった。甘さは調整できたが、普通のままでお願いした。氷は少なめにしておいたので薄くならずに済んだかも。配達料もあり割高だが、トータル108元でだいたい500円程度なのでよし。使い勝手もなんとなくわかったので、翌日にはなにか食べ物を頼んでみようと思った。

  • 2日目朝

ゆでたまごもある

2日目朝はなんかキャベツをくるんで焼いたやつだった。名前は知らない。これは結構美味しかった。ついているのは豆漿(豆乳)。

このあと申請書書いたり本読んだりストレッチしたりする。

  • 2日目昼

これはいまのところ一番微妙。全体的に冷凍食品っぽいのはまだいいが、鶏とかは冷凍焼けしている味がした。無料のインスタントみそ汁を飲む。

  • 2日目夜

りんごは小ぶりだがいい感じ

夜飯の弁当ではおいしい部類であった。0日目夜のものと似ているが、味付けはこっちのほうがあっさりしている。右上の豚肉の炒め物はニンニク醤油のような味つけ。豆が入っている分かコメは少なめになっているが、野菜類も味が濃く、もう少しあったほうがよかった気もする。

  • 吮指王 「招牌大雞排」

招牌大雞排

まだ食えるので、昨日に引き続き外送を頼んでみた。これも108元。すぐ届いたが、配達した人から直接電話がかかってきてへんな中国語をはなすはめになった。例によってフロント→部屋までが時間がかかる。

その前にルームサービスで注文した割高の台湾ビールが届いた。ビールと一緒に氷の入ったカップがサーブされたのはびっくりしたが、どうも台湾では結構やるらしい。

さて鷄排である。今回頼んだお店はけっこう店があるチェーンらしい。時間は少し経ったがまだまだ揚げたての熱さが残っている。結構スパイシーな味だが、衣には甘みもある。ビールに合う味でとてもうまいが、けっこうでかいので先に飲み終わってしまった。以前台湾で食べたのは台北のどこかの夜市だったが、めちゃくちゃ並んだ覚えがある。割高とはいえ150円程度の差なので、家ですぐ食えるならデリバリーもまあありだなと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡航

ほぼ眠れなかった。とりあえず6時30過ぎになったのでブレーカー、ガスの元栓、水回りを確認。持っていくべきものもおそらく揃っているが、この部屋はこのまま数か月放置されるのかと思うと家を出るのはなかなか難しかった。

206系統で京都駅まで向かう。京都駅には、まともな朝飯が食える店はそう多くない。ミスタードーナツで謎のパイを食べ、いつもは頼まないアイスミルクティーを飲んだ。かくして、これが京都で食べる最後のめしとなった。気の迷いで特急はるかに乗ったが、席は空いていて快適であった。とはいえ、心中穏やかではない。クネクネしながらヨーグルッペの炭酸飲料を飲んでいたらすぐ空港に着いた。

特急はるか。ハローキティがいたるところにいる

チェックイン開始まで相当に時間がある。とはいえ関空も店はほとんど開いてない。デカい荷物がある状態ではうろちょろするわけにもいかず、書類の確認やらなんやらをして時間をつぶす。

保安検査場を抜けるも、休業が目立つ。免税店はにぎわっていたが、気が進まず何も買わなかった。中国人の旅客は、頭まですっぽりと覆う真っ白の防護服を着ている人も多く、少しぎょっとした。

スターラックスには初めて乗ったが、おおむねよかった。空港でろくに飯がなかったのでひもじい思いをしていたが、機内食が出てきたのでひとまず解決した。野菜が多いのもうれしい。

椰汁咖喱魚佐洋葱奶油飯

持ってきた内田百閒の本を読んで過ごす。「百鬼園先生思えらく、飛行機に乗るのもいいが、落ちるとあぶない」「寧ろ、飛行機に乗って安全なる事を求めるよりは、之を自殺の具に供する方が趣がある」。台風の影響でめちゃくちゃ揺れている飛行機で読むのは格別である。

着陸後が大変であった。SIMをあらかじめ買っていたのはよかった。いろいろと引き回され、最後は唾液を吐いたものを提出。大学やらなんやら複数の場所に連絡をしないといけないこちらも手間だが、こういう管理をする側もいい加減疲弊していそうなものだ。寮費なども含め15万円を台湾ドルに両替した。関空ほどではないが、台湾ドルがここでもかなり高く円安を感じた。まあ台湾ドル自体も相当高くなっているらしいが……。その後タクシーで空港近くのホテルに移送される。大学その他にいちいち連絡をする必要がある。

ホテルの受付の人は流暢な日本語を話したのでちょっとびっくりした。清潔で、思ったより広い部屋だったが、いかんせんバカ高い費用を払ったので粗探しをしたくなる。とりあえずトイレットペーパーが流せないタイプなのはかなり嫌だ。洗濯は自分で手洗いするようになっていてこれも嫌だが、クーラーのおかげですぐ乾いた。

窓を開けると、台湾のにおいがする。台湾のにおいというよりほかにないかおりを帯びた暖かい空気が入ってくる。外に見える景色は面白いものではないが、野犬が喧嘩をしていたり、「乙女の祈り」の電子音を響かせるゴミ収集車がいたりする。自分はまだこの景色の中に入ることができないのだと思うと、少しもどかしい。

夜ごはんは鶏肉の弁当だった。疲れもあり、なかなか箸がすすまなかった。野菜もあるが全部油っ気が強い。有料でビールも頼めるのだが高すぎるのでやめておいた。

しばらくして携帯に電話があり、いきなり名前を聞かれ困惑。やはりコロナ関係で連絡しているらしかった。本当に面倒が多い。これが1週間くらいは続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めしと思い出①

一般に、人間は30近くにもなると食の好みも変わるし、おいしいものもたくさん知るようになる。しかし、自分のように大学に10年もいるような(しかも使える金も学部生とたいして変わらない、あるいはそれより少ないかもしれない)人間は別である。

 

きみたちが「さよなら京都*1」したあとも 私はずっとここにいました

 

京大周辺の思い入れのある店についての雑文を書きとめることにする。京都を離れる前にはいつも、大学周辺のことが恋しくなるものだ。①としたが、続くかはわからない。

昔話をする人間は嫌われる。しかし前に進むためにはこういう時間も必要だ。

 

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とにもかくにも「おくだ」である。

おくだは北部キャンパスの近くのとんかつ屋である。以前は「ケニア」の横にあり、『渡る世間は鬼ばかり』のセットのようなカウンターと、テーブルふたつの座敷席があった渋い店舗だった。現在は改装工事のためにそのむかいの仮店舗で営業している。移転のせいか、いくつかのメニューが消えた気もする。しかし営業してくれているのは本当にありがたい。

おくだのみぞれ

学部生のころ、突然店主が亡くなられた。ショックであった。現在はおそらくお弟子さんが継がれたようである。味もほぼ変わらない(ように思う)。

メニューや店のインスタ*2に登場する豚のかわいいイラストは、おばさんの手によるものだろうか。ずっと元気でいてもらいたい。

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さて、おくだは、まだ未成年であった自分のとんかつ観を大きく塗り替えた。どんなとんかつを食べても、おくだというマスターピースが基準となってしまっている。

分厚くも柔らかい肉、サクッとしつつも油っこさをあまり感じさせない衣。こんなにうまいとんかつが存在するのか、と驚いたものである。さらに、当時は1000円を切っていたこともありコスパも高かった。今は値上げして1150円程度であるが、それでも値段以上の価値がある。デブラーメンやチェーン店のめしに1000円出すより、繊細でいてダイナミックなおくだのとんかつを食うべきである。

 

とはいえ、もちろん思い出補正も否定できないし、舌の肥えた諸君に言わせればもっとうまいとんかつはあるのかもしれない(あれば奢ってもらいたいものだ)。しかし、これほどのクオリティのものを学生でも食べられる値段で出す店は偉大だ。

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おくだには、分厚くて値段もそれなりに高いジャンボロースかつというメニューがある。過去にはこれと同じくらいの値段のビーフカツもあった。こちらは、最近よく見かけるレアで薄い牛カツではなく、とんかつ同様しっかり揚げた肉厚のものである。高いとはいえ、どちらも2000円を切るのでかなり良心的である。

これらのメニューは、何かめでたいことがあった日に食べようと思っていたが、結局どちらも1、2回しか食べたことがない。めでたい日などそうそうなかったというわけだ。

どういう機会だったかも忘れた。新人戦優勝、1部リーグ昇格、院試合格とかそういうのにかこつけて食べたような気がする。ただ、とてつもなくうまかったという記憶だけがある。

 

昔は最もコスパの高いであろう上かつ丼を食べていたが、味覚が多少は洗練されたので、最近ではみぞれや練り梅をよく食べている。滋味。

ただ、思い返してみると、とんかつ以外をほぼ注文していない。食べたことのあるのは、最近の穴子かつ丼、冬のカキフライ定食くらいかもしれない。

レギュラーメニューには、かぼちゃコロッケ、豚しょうが焼き、エビフライ、エビかつなどもある。いずれは食べたいとずっと思っていながらも、とんかつの誘惑を断ち切ることは至難の業だ。

 

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「おくだの赤だしには、麻薬が入っとるんや」

かつて部活の先輩はこう語った。週に何度も通うおくだジャンキーであったその先輩は、おくだで豚ブロックも買って帰っていた。おくだを教えてもらってまもなく、自分もおくだの中毒者となった。実際のところ麻薬は入っていないのは言うまでもないが、とんかつが出てくる前に啜るあの赤だしは、やたらにうまい。

 

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さて、9月から国外フィールドワークに行く。行きたくない気持ちはでかいが、これをやらねば博士はない。

調査がうまくいったらおくだでジャンボロースかつ定食を注文しよう。うまくいかなくても、無事に戻ってきたら食べに行こう。胃もたれしてもいい。生きる喜び、それはきっととんかつの形をしている。

 

 

 

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*1:「退屈をかくも素直に愛しゐし日々は還らず さよなら京都」/栗木京子

*2:

とんかつ処おくだ (@tonkatsuokuda2) • Instagram photos and videos